オフィスに個室スペースを設ける3つの方法とは?知っておくべき注意点も解説

ここ数年でWeb会議が普及している中で、会議できる環境が整っていないと感じる従業員が増えています。そこで、注目されているのがオフィスに個室スペースを設けることです。
当記事では、オフィスに個室スペースを設ける3つの方法や、メリット・デメリット、把握しておくべき注意点を紹介します。ぜひ参考にしてください。
目次
オフィスの個室ブース不足が問題視されている

現在、会社員の中でWeb会議をする機会が増加したことにより、オフィス内でさまざまな問題が発生しています。株式会社ロータスの「オフィス勤務とビデオ会議」に関する調査によると、オフィスで働く会社員の約9割がWeb会議を行っているにもかかわらず、そのうち約4割が会議室不足の問題に直面しています(2022年6月時点)。
例えば、従業員同士のコミュニケーションが活発化するよう開放的につくられたオフィスでは、周囲の会話や雑音が気になり、会議に集中できないこともあるでしょう。
調査結果からもわかるように、全体の約4割の会社員が会議室不足により Web会議に支障をきたしていることが判明しています。この課題を解決するため、周囲を気にせず業務にあたれる個室ブースのような空間の設置が急務となっています。
オフィスに個室スペースを設ける3つの方法

オフィスの個室が不足しているのを解消するためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、個室スペースを設ける方法を3つ紹介していきます。
- パーテーションを設置する
- 造作壁を設置する
- 個室ブースを導入する
パーテーションを設置する
オフィスに個室スペースを設ける方法の一つとして、パーテーションを設置する方法が挙げられます。パーテーションを設置する場合の特徴は以下のとおりです。
- 導入の容易さ:導入後も再配置や調整などがしやすいため手軽に導入できる
- コスト:個室をつくるよりも安価におさえやすい
- 遮音性:遮音効果には乏しいため隣の人の話し声などが聞こえやすい
- 周囲とのコミュニケーション:パーテーションの高さがある場合は、チーム間で隔離状況になるためコミュニケーションが阻害されやすい
パーテーションの中にも種類があり、「ハイパーテーション」と「ローパーテーション」に分かれます。ハイパーテーションは、天井に達するほどの高さがあり、ドアや鍵なども設置できるため入退室の管理も可能です。
一方、ローパーテーションは、高さは低いものの、半個室にしたり複数のパネルを組み合わせたりできることから導入しやすい傾向です。レイアウトの変更も容易で、ハイパーテーションに比べて低価格であることから、オフィスの需要や予算に応じて柔軟に対応できる利点があります。
造作壁を設置する
造作壁を設置して、オフィス内に個室をつくる方法もあります。壁で仕切り、ドアの設置や施錠することで、完全に個室化できます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 導入の容易さ:オフィスのニーズに合わせながらカスタマイズできるため柔軟性は高いが、設計〜工事まであるため時間を要し、将来的なオフィスのレイアウトも変更しづらい
- コスト:パーテーションの設置に比べてコストが高い
- 遮音性:遮音効果が高いため、雑音が気にならず集中できる
- 周囲とのコミュニケーション:完全個室になるため周囲の視線を気にせずに集中できる
造作壁は、カスタマイズできるため、オフィスデザインに合わせて仕上げることができます。また、造作壁は遮音性にも優れているため、静かな環境づくりも実現できるでしょう。
個室ブースを導入する
個室ブースとは、オフィスの中に四方の壁に囲まれた小さな個室を設けることです。個室ブースは、天井まで封鎖されて、ガラス張りで仕切られていたり、壁で仕切られたりするだけの半個室のものまであります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 導入の容易さ:既製品を選べば比較的迅速に設置できるが、カスタマイズや電気工事が必要な場合は時間とコストがかかる
- コスト:遮音性に優れた個室ブースは、高価な場合もある
- 遮音性:完全に仕切られた空間のため、周囲の雑音が聞こえにくく集中しやすい
- 周囲とのコミュニケーション:空間が周りと遮断されているため1人での作業時間に没頭してコミュニケーション不足に陥る可能性があるが、プライバシーの保護はしやすい
「オフィスに個室スペースを設ける」と言っても、1人用だけではなく、2〜3人用など部屋の広さのカスタマイズもできます。オフィス内の空いたスペースに個室ブースを設置するだけのため、大規模な工事も不要です。
オフィスに個室スペースを設ける3つのメリット

オフィスに個室スペースを設けることは、集中力が上がる、Web会議に集中できる環境づくりが行えるなどさまざまなメリットがあります。ここでは、メリットをもう少し深堀りしていきます。
従業員の生産性が向上する
オフィスに個室スペースを設けることで、従業員の集中力と生産性の向上が期待できます。個室スペースで仕事を進められると、外部からの視線や刺激が軽減するため、集中しやすくなります。
特に、クリエイティブな作業や複雑な分析業務など、高度な思考を必要とする作業では、重要な役割を果たすでしょう。
また、オープンなオフィスのように他の従業員から話かけられずに済むため、黙々と作業を進められます。
Web会議に最適な環境ができる
オフィスに個室スペースを設けることで、音に関する2つのメリットが得られます。まず、会議の音声が外部へ漏れにくくなり、周囲の従業員への配慮が可能になります。同時に、外部の雑音がマイクに入りにくくなるため、会議の音質が向上します。音声だけでなく、周囲の人が背景へ映り込むことも軽減されるため、Web会議に最適な環境づくりが行えます。
日経クロステックの調査によると、オンライン会議の頻度について「増えた」が約35.3%、「やや増えた」が約26.9%と、約6割以上の従業員がWeb会議の増加を実感しています(2024年8月時点)。
このような、Web会議が普及する中で、会議に最適な環境づくりが行えると、従業員も集中して取り組めるでしょう。
情報漏えいのリスクを減らせる
オフィスに個室スペースを設けることは、情報セキュリティ対策の一環として考えられ、機密情報の漏えいリスク低減に寄与する可能性があります。顧客の個人情報などの機密情報を扱う企業では、個人情報保護の重要性が年々高まっており情報管理体制の強化が求められています。
多くの人が行き交うオープンオフィスでは、ディスプレイ画面や会話などの盗み見・盗み聞きが容易にできてしまいます。一方、オフィスに適切に個室スペースを設けることで、視覚的・聴覚的な情報の保護に役立つ可能性があります。これにより、情報漏えい対策の一助となることが期待できます。
オフィスに個室スペースを設けるデメリット

オフィスに個室スペースを設けるメリットを紹介してきました。ここでは、デメリットを詳しく解説します。
十分なスペースの確保が必要になる
種類によって変わりますが、オフィス内で十分なスペースが必要になります。
特にオフィスが狭く、使用できるスペースが限られている場合は、レイアウトや個室化方法の検討を慎重に行う必要があります。
例えば、オフィスが狭い場合は折りたたみ式のパーテーションを使用するとよいでしょう。できるだけ空間を最大限活用できるように、事前にレイアウトなどを検討することが大切です。
使用状況の把握が必要になる
特に従業員数が多い企業になると、個室の使用状況や残席状況の確認が重要になります。個室スペースの利用では、以下のような課題が発生しやすくなります。
- 使用したい時に空室がない
- 予約状況が把握できない
- 突発的な予約への対応が難しい
などが挙げられます。
そこで、リアルタイムで個室の空席状況などを確認できるツールやオンライン予約システムの導入がおすすめです。特に個室の利用頻度が高い企業や、従業員の入れ替わりが多い職場では、このような管理ツールの導入が業務効率の向上に大きく役立つでしょう。
オンライン予約システムとしては、「Nimway」というサービスがあります。各会議室にセンサーを設置することで、リアルタイムで予約状況を確認し、各部屋を有効活用することができます。
オフィスに個室スペースを設ける際のコツ

オフィスに個室スペースを設けようと思っても、無計画に進めてしまっては個室スペースが使用しにくい状況になる可能性があります。そこで、個室スペースを導入する前に、社内で検討すべき事項をまとめました。ぜひ参考にしてください。
個室にする目的や用途を把握する
まずは、なぜオフィス内に個室スペースを増設するのか目的や使用用途を考えましょう。目的が分かれば、機密性や防音性はどのくらい必要なのか、何人で使える個室スペースが必要なのか、より完成をイメージしやすくなります。
例えば以下のような使用目的が考えられます。
- 少人数でミーティングするスペースを設けたい
- 1on1でミーティングできる環境を設けたい
- 従業員が仕事に集中できるような環境をつくりたい
このようなことが考えられます。
仕事に集中できる環境づくりであれば、ある程度防音性や仕切りも必要になることがわかります。
このように、個室スペースを設ける際は目的や使用用途を明確にしてから導入しましょう。
社内で問題に挙がっていることから選ぶ
社内で従業員が困っていることや問題になっていることから選ぶこともできます。例えば以下のような問題があります。
- 周囲の動きや視線が気になり、デスクワークに支障が出ている
- 会議室が常に予約で埋まっているため、使いたい時に使えない
- 重要な商談や打ち合わせに適した空間が確保できない
上記の問題から、個室化する方法や種類などを検討することで、より従業員から重宝される個室化ができるでしょう。
より効果が高まる!個室スペースの設置場所のポイント

ここからは、オフィス内に個室スペースを設置する場所のポイントを詳しく紹介していきます。
- 人が頻繁に行き来しない場所
- 周囲のノイズ音があまりない場所
- 動線上邪魔にならない場所
人が頻繁に行き来しない場所
個室スペースの効果を最大限に発揮するには、人の往来が少ない場所への設置がおすすめです。従業員が頻繁に行き来する場所に設置すると、人の話し声や足音による騒音が気になってしまいます。個室スペースを設置することで、周囲の騒音を気にせずに、Web会議や作業に集中できる環境が整います。
特に、パーテーションなどで簡易的に仕切っている場合、時には人の気配を感じるだけで、集中力が途切れることもあるでしょう。そうならないためにも、オフィスの端や人の出入りが少ない場所に設置すると、より個室ブースが従業員にとって使いやすくなります。
周囲のノイズ音があまりない場所
オフィスに個室スペースを設けるためには、周囲の騒音や雑音が気にならないところに設置することが大切です。
株式会社ロータスの「オフィス勤務とビデオ会議」に関する調査によると、従業員が作業に集中できない要因として「周囲の会話が気になる」と答えた人が一番多いことがわかっています。
そのほかにも、従業員に話しかけられることが多い、人の出入りが多いことが集中を妨げる要因として挙げられています。このように、従業員が集中できる環境づくりのためには、ノイズが少ない場所に個室スペースを設置することを心掛けましょう。
動線上邪魔にならない場所
オフィス内に個室スペースを設けるためには、人が行き来する動線上の邪魔にならない箇所に配置することが大切です。
理想的な設置場所は、オフィスの端や角のスペースです。こうした場所であれば、他の従業員の移動を妨げることなく、オフィス内をスムーズに移動できます。特に、窓際や壁際のスペースを活用することで、スペース効率を高めながら、自然な形で個室を配置できるでしょう。
また、複数の個室スペースを設置する場合は、まとまったエリアに集約することで、動線の分断を防ぎ、オフィス全体の回遊性を保てます。こうした動線への配慮により、個室利用者と他の従業員双方にとって、快適な職場環境を実現できるでしょう。
オフィスに個室スペースを設ける前に!把握しておくべき注意点

ここでは、オフィスに個室スペースを設ける前に把握しておくべき注意点を紹介しています。
関連法規に違反しない
オフィスに個室スペースを設ける際には、建築基準法や消防法などの法律に抵触しないようにする必要があります。建築基準法では建物の安全性と快適性を確保するための最低基準を定めており、個室の設置によってこれらの基準を下回ることは許されません。
一方、消防法とは火災や災害時の被害を最小限に抑えるために設けられた法律で、個室の設置場所や構造によって大きく関わってきます。具体的には、避難経路の確保や火災報知器の適切な配置などに関わります。
これらの違反を避けるためには、個室化を計画する段階から建築士や消防設備士などの専門家に相談し、法令を遵守した安全な個室化を目指すことが大切です。
オフィス天井の種類を把握する
オフィスの天井の種類によって、照明や空調の設置などが必要になります。一般的なオフィスビルでは、システム天井が多く、照明や空調設備の設置・メンテナンスを容易にするために格子状に区切られたつくりになっています。
一方、スケルトン天井の場合は、設備配管が露出しているため、個室設置時の照明や空調の追加工事が複雑になる可能性があります。このように天井の種類によって、空調の設置方法などが異なるため、専門家への相談をおすすめします。
まとめ:自社に最適なオフィスの個室化を検討しよう

Web会議が急速に発展する中で、オフィス内での個室化が求められています。個室化を検討する際は、目的や企業内で問題に挙がっていることから方法を検討して導入することが大切です。
オフィスを個室化することによって従業員の生産性が向上するメリットなどがあるため、十分に検討した上で自社に最適な個室化を検討しましょう。
個室以外にも、最新のオフィストレンドについて興味のある方はこちらの資料を参考にしてください。
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移転Biz編集室
こんにちは、移転Biz編集室です! オフィス移転の際に役立つ情報をお届けします。