企業がオフィスを移転する理由とは?移転の手順や成功のポイントについても解説
東京商工リサーチの調査によると、2020年〜2023年の間で本社機能を移転した企業は、10万5,367社にのぼるとされています。
この記事をご覧の方の中には、なぜ企業がオフィスを移転するのか気になっている方も多いのではないでしょうか?企業がオフィス移転をする理由は、業績拡大やブランディングといった前向きなものから、経費削減といった理由まで幅広く存在しています。
本記事では、企業がオフィス移転をする理由や、移転の手順などについて詳しく解説します。記事の後半では、オフィス移転を成功させるためのポイントも解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
参照:企業の本社移転、コロナ前の1.6倍増 今後は出社回帰で大都市への転入が増加するか | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
企業がオフィス移転をする理由
企業がオフィス移転をする理由は様々ありますが、その中でもよくある移転の理由について紹介します。
- 従業員の増加に対応するため
- 優秀な人材を確保するため
- 従業員のモチベーション向上のため
- ブランディングのため
- ビジネスの効率化のため
- 経費削減のため
- 縮小移転するため
- 賃貸借契約が終了するため
従業員の増加に対応するため
オフィス移転の理由として一番多いのは、従業員の増加に伴うスペースの確保です。
例えば、法律で定められている労働者1人あたりの最低スペースは、約1.4坪(4.8平方メートル)以上とされています。これは、労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則で定められており、事業者が独自の判断で決められるものではありません。
しかし、上記はあくまで最低基準であるため、現実的にはもう少し広いスペースを用意する必要があります。
特に、採用を強化している企業の場合、従来のオフィスでは対応しきれず、移転を検討するケースがよくあります。
優秀な人材を確保するため
求職者にとって、オフィス環境は企業を選ぶ際に考慮する基準の一つです。
例えば、以下のような要素は、企業選定の際にプラスに捉えられることがあります。
- 交通アクセスが良い
- 先進的なデザインを取り入れている
- 眺望が良い
- カフェスペースや休憩室が充実している
オフィス環境が整っていれば、求職者からの人気も高まり、より優秀な人材を獲得しやすくなるでしょう。
従業員のモチベーション向上のため
オフィス移転によって、外部からの人気を高めるだけでなく、既に自社に所属している社員のモチベーションを高めることも可能です。
特に、自社に長く在籍している社員にとっては、日々のマンネリを解消するきっかけとなります。メリハリをつけられるようなリフレッシュスペースの設置や、フリーアドレスの導入などが効果的な施策となるでしょう。
上記のような施策を実施することで、従業員のモチベーションが上がり、生産性及び業績の向上が見込めます。業績向上によって得た利益は、給与やオフィス環境の充実として社員に還元することで、さらなる生産性の向上が見込めるでしょう。
ブランディングのため
オフィスの所在地は企業のブランド力に関わる重要な要素です。そのため、企業はブランド力向上を目的としてオフィス移転をするケースも少なくありません。
また、企業のブランド力向上が期待できる立地は、業種によって異なります。
中でも自社と同様の業界の企業が集積している地域では、ブランディングの効果が高いと言えるでしょう。例えば、IT業界であれば渋谷・六本木、銀行は丸の内といったように、同業界の有名企業が集積している地域に移転をするとブランド力は高まります。
こうしたブランディングは、企業の信用度も高まり、広告や営業の成果向上にも繋がります。
ビジネスの効率化のため
自社のビジネスを効率化させるために、オフィスを移転するケースもあります。
例えば、自社の業界や取引先が多い地域にオフィスを構えることで、情報交換の場を頻繁に設けられるほか、顧客訪問などの営業活動を効率化させることができます。
また、海外企業との取引や出張が多い企業は、空港・新幹線へのアクセスが良い立地などが便利です。
上記のように、より密度の高い交流や、移動距離の削減を目的としたオフィス移転を実施する場合もあります。
経費削減のため
経費削減のため、現在よりも賃料が安いオフィスに移転するケースもあります。
当然ですが、オフィスの賃料や光熱費は会社が負担をします。そのため、賃料や光熱費を安く済ませることができれば、直接的なコストカットが可能です。
注意点として、賃料の安い地域やビルにオフィスを移転すると、企業のブランド力が落ちてしまうことも予想されます。会社運営上やむを得ない場合は仕方ありませんが、経費削減のためのオフィス移転実施は、慎重に判断する必要があります。
縮小移転するため
縮小移転とは、オフィスの規模を小さくするために物件やフロアを移動したり、一部のスペースを返却したりすることを指します。
この縮小移転は「経費削減のため」というよりも「働き方のアップデートに適応するため」という意味合いが強くなります。
例えば、大手広告代理店である電通グループは、パンデミックによるテレワークの普及などを理由に、本社ビルを売却することを発表しました。同社はWebサイト上にて、売却のメリットを以下のように説明しています。
本取引が成立した場合、毎年のリース契約に伴う費用の増加が見込まれる一方で、本建物の減価償却費が削減され、また本建物の保有を続ける場合に想定される本建物の修繕やテナントの管理等にかかる費用のほか、テクノロジーやワークスタイルの進化に合わせた設備更新費用の計上の必要が無くなります。 |
当然ですが、出社する社員がいなければ、わざわざ高い維持費を払って自社ビルを保有する必要はありません。
上記のように、働き方のアップデートに伴ってオフィスを小規模化させることが縮小移転の最大の特徴と言えます。
賃貸借契約が終了するため
賃貸借契約の内容によっては、期間の満了に伴ってオフィスを移転させなければならないケースがあります。
例えば、使用期限が決まっていて更新ができない場合や、オーナーが変わったことにより意向が変わってしまった場合などが挙げられます。
企業によっては契約から長い期間が経っており、契約内容を把握していなかったり、忘れてしまったりしている場合もあるでしょう。定期的に契約内容を確認し、不測の事態に備えることが重要です。
オフィス移転の手順
オフィス移転の際に企業が取り組むべきタスクは多岐にわたります。一般的なオフィス移転の流れは以下の通りです。
- 入居中のオフィスの契約内容を確認する
- オフィスの移転計画を策定する
- 移転先オフィスのレイアウトや、家具・備品を選定する
- 業者を手配する
- 各種手続きをする
1.入居中のオフィスの契約内容を確認する
まずは、現在契約しているオフィスの契約内容を確認しましょう。契約の内容によっては、移転のスケジュールや費用に大きく影響する可能性があります。
特に、以下の事項は重要であるため、必ず確認しましょう。
確認すべき契約内容 | 概要 |
---|---|
解約予告期間 | 解約予告には提出期限がある。期限内に書面で通知する必要あり。 |
原状回復 | いつまでにどのような状態までオフィスを戻すのかを確認。工事業者が指定されている場合もある。 |
特約条項 | 上記以外のオフィス退去に必要な事項。 |
2.オフィスの移転計画を策定する
契約内容の確認が終了したら、実際にオフィスの移転計画を策定していきます。手続きが多いオフィス移転では、計画性が非常に重要な要素となります。移転の目的やオフィスの条件などは慎重に決めましょう。
また、この際に、移転の大まかなスケジュールも策定しておくことも重要です。オフィス移転では、自社オフィスの引き払いや引っ越し、工事など、長期間にわたるタスクが発生します。
移転の直前になって慌てることがないように、移転計画から逆算してスケジュールも策定しておきましょう。
3.移転先オフィスのレイアウトや、家具・備品を選定する
移転先の物件が決まったら、図面などを元にオフィスの内装やデザインを考案します。
内装やデザインは、オフィス移転の目的に沿った設計にすることが重要です。例えば、新しい働き方に対応することを目的としている場合は、固定のデスクを減らし、フリーアドレスを多めに設定するといった工夫が考えられます。
また、上記に伴って家具や備品なども新調する必要になるケースがあります。新たに購入するだけでなく、リースで一時的に導入することも含めて検討しましょう。
4.業者を手配する
レイアウトや備品等の目処がついたら、実際に業者を手配していきましょう。工事業者や引っ越し業者、家具の販売やリース業者など、順次依頼を開始します。
また、オフィス移転をスムーズに進めるためにも、移転のスケジュールは事前に従業員へ周知しておきましょう。
5.各種手続きをする
オフィス移転の際には、様々な行政機関へ届出を出さなければなりません。中には、手続きの期限が設けられているものもあるため、注意が必要です。
手続きを行う行政機関と必要な提出物は以下の通りです。
提出先 | 必要書類 |
---|---|
消防署 | ・防火対象物使用開始届出書 ・防火対象物工事等計画届出書 |
税務署 | ・異動届出書 ・給与支払事務所等の届出 |
労働基準監督署・ハローワーク | ・労働保険名称、所在地変更届の届出 ・雇用保険事業主事業所各種変更届 |
法務局 | ・本社(または支店)登記申請書 |
年金事務所 | ・適用事業所所在地 ・名称変更(訂正)届(管轄内) ・適用事業所所在地・名称変更(訂正)届(管轄外) |
郵便局 | ・郵便物届出変更届 |
警察署(社用車を保有している場合のみ) | ・自動車保管場所証明申請書 ・安全運転管理者変更届 (ナンバープレート変更がある場合) |
ご覧の通り、提出書類は多岐に渡ります。チェックリストを用意するなどして、確実に全種類提出できるようにしましょう。
なお、NURO Bizでは、オフィス移転をお考えの企業様に、無料で移転手続きのチェックリストを配布しています。
以下のページよりダウンロード頂けるため、ご興味のある方はこちらもご覧ください。
オフィス移転を成功させるために重要なポイント
オフィス移転を成功させるためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 移転の目的を明確化する
- 余裕のある移転スケジュールを組む
- 社内メンバーの理解を得る
- プロフェッショナルに依頼する
移転の目的を明確化する
オフィス移転の目的を明確化すると、その後の選択をスムーズに進めることができます。
例えば、物件を探す際でも、立地や家賃、広さや建物の構造など、条件を上げればきりがありません。こういった際でも、移転の目的が明確であれば優先すべき条件もわかり、スムーズに移転を進めることができます。
また、移転後も、当初の目的から大きなギャップを感じることはないでしょう。
オフィス移転のメリットを最大化させるためにも、移転を計画し始める時点で、明確な目的を定めておくことが重要です。
余裕のある移転スケジュールを組む
オフィス移転は、当初の計画通りに進むとは限らないため、余裕のあるスケジュールを組むことが重要です。
一般的に、オフィス移転にかかる期間は、準備段階から含めて最低でも半年ほどと言われています。しかし、多くのタスクを必要とするうえに、自社や業者、オーナーの事情など複雑な要素が絡み合っているため、予想外の事態は常に起こり得ます。
上記を念頭に、余裕のある移転スケジュールを組むようにしましょう。
社内メンバーの理解を得る
オフィス移転の影響を一番受けるのは、自社のメンバーです。そのため、社内メンバーに納得してもらえるように移転を実施しましょう。
具体的には、社内メンバーに理想的なオフィスに関するアンケートを実施し、意見を集めるのも有効的です。集まった意見から、なるべく理想に近い形で移転を実現させるようにしましょう。
また、移転が決まった際は、目的や理由を必ず社員に伝えましょう。ここが不透明なまま移転を進めてしまうと、社員の不信感が募る原因になります。
オフィス移転では、社員が納得したうえで移転を進めると、移転後の生産性向上にも大きく寄与します。トップダウン式で推し進めるのではなく、現場の社員に寄り添って移転を進めていきましょう。
プロフェッショナルに依頼する
オフィス移転は、業務が多岐にわたる上に、専門知識も必要です。また、現場の社員が通常業務と並行して進めるとなると、負担も大きくなるでしょう。
移転を進める際は、オフィス移転の専門業者やコンサルタントに依頼することも選択肢の一つです。自社のリソースを抑えられるうえに、プロの専門知識を活用できます。
また、自社で新たに人材を採用する必要がないのもメリットです。移転業務のみを依頼できるため、移転後にコストが発生することはありません。
オフィス移転に関するリソースや知識がない場合は、積極的にプロフェッショナルを活用しましょう。
まとめ
企業がオフィス移転を実施する理由は、業績拡大やブランディングといった前向きなものから、経費削減といった理由まで幅広く存在しています。
また、多くの期間やリソースを要するため、前もって計画的に移転を進めていくことが重要です。
オフィス移転に関する知識やリソース不足にお悩みの方は、外部のプロフェッショナルに委託することも検討しましょう。
膨大なタスクがあるため、抜け漏れがないようチェックリストを活用して移転業務を進めていきましょう。
\ この記事を書いた人! /
移転Biz編集室
こんにちは、移転Biz編集室です! オフィス移転の際に役立つ情報をお届けします。